17日の木曜日

思ったことを思ったままに。

アイドリッシュセブン本編第五部を読了した話 ‐前編‐

 おはようございます、紘月です。二年ぶりです。

 2022年6月27日更新分をもって、アイドリッシュセブン本編ストーリー第五部が終幕いたしました。それと同時に私自身も読了致しましたので、その感想&考察のふりした妄想をネタバレ配慮一切なしで綴っていこうと思います。

 体感ではとても短かったように思えましたが、これまでと章数はあまり変わりがないようです。風呂敷を広げすぎている、という印象がないせいかもしれません。話題の中心は、前半はアイドルたちのドキュメンタリー番組、後半はTRIGGER主演のミュージカル「ゼロ」。合間に展開される事柄にその先を感じても、膨らみすぎていなかったからか、いまは重要なことではないと感覚的に印象が薄くなったのだと思います。MEZZO”のふたりにスポットが当たる話題がなく、新曲の追加もなかったのは初めてのことでした。

 ミュージカル「ゼロ」はTRIGGERの再起に向けての最後のピースであったと思います。最後である理由は、八乙女親子の会話から。恐らく第六部が始まった時点か、少なくとも早い段階でTRIGGERは八乙女プロダクションに再所属の運びになるのではないかと思います。ドキュメンタリー番組を始めとしたテレビ出演が増えてきたりと、TRIGGERの活躍が中心となった第五部ですが、私には九条鷹匡という男を供養する物語にみえました。

 

九条鷹匡の話

 第五部は九条鷹匡の鎮魂歌だった。

 最終章を読み終えて最初に思ったことです。ゼロに熱狂して、ゼロに囚われて、ゼロに期待して、ゼロを誰より愛して誰より憎んだ、九条鷹匡という亡霊を供養しない限り伝説は終わらない。天がそれを自分ひとりでどうにかしようとした理由は、彼の弱さと情の深さでしょう。確証はないと言っていたけれど、そうであってほしくないという想いが彼の判断を鈍らせた。そしてどこかで、彼の実弟と養父を重ねていた。実際に九条を導くことができたのは、天が保身のために遠ざけようとしていた陸の言葉でした。

 九条も陸も、自分の一番近くにいた、自分にとっていちばんのスーパースターを突然失いました。ずっと九条と陸は同じ話をしているようにみえたのですが、誰にも言及されていなくて私の勘違いなのかとも思っています。突然自分を捨ててどこかへ消えてしまって、大好きなのに大嫌いで、心配で、でも恨めしくて、愛していることを忘れてしまいたいのにできない。陸が無意識のうちに、その想いから自分は目を背けてはいけないと九条に伝えることができたから、九条の心を動かすことができたんだと思います。さすが訴求力おばけ。

 

九条鷹匡と和泉一織の話

 一織は九条さんに似てると、公式で明言されました。たしかに、一織の未来は九条さんだったかもしれません。でも傍にいるスーパースターが違う。そして、そんなスーパースターに対する認識がまるで違う。陸が「ゼロにはパラシュートがなかったのかな」と言っていましたが、そういうことです。

 九条さんはゼロに対して要約すると「完全無欠のスーパースター」という表現をします。(要約です、本当はもうちょっと長いです。)でもそれは、ファンが言うことなんです。アイドルの傍にいる人たちが、スーパースターをただの人間だと知っている人たちが、絶対に言っちゃいけないことだった。ゼロがそれに遠慮していたとは思えません。でも、実際にゼロは自分の苦しみも悲しみも辛さも、弱いトコロは一切みせることなく、九条さんと桜さんの前から姿を消しました。パラシュートの予備を持っている人も、自分が落下する先でマットを敷いて待っていてくれる人も、落ちそうになる自分の手を上から掴んでくれる人も用意できないまま、ぱちんと弾けて消えていきました。

 九条さんもそのことには気づいていたかもしれません。だからこそ、なにも言わず消えたゼロを憎んだ。気づけなかったんじゃない、ゼロが言わなかった。僕がゼロに信頼されてなかったのか、そんなわけがない。僕は、なにも悪くないんだ。自責と保身が綯い交ぜになって、愛憎という悲しみの塊を生み出してしまったのだと思います。

 一織は陸に対して「私がスーパースターにしてみせます」と宣言しています。でも一織とファンにとって陸はもうスーパースターです。そんな一織が、自分のスーパースターである七瀬さんを盲信しないのか。それは、一織にとって七瀬さんが“人間”だからです。完全無欠のスーパースターがあんなに頼ってこないでしょう。陸が不完全でちょっとポンコツで、素直だから、一織は予備のパラシュートを準備できるんです。というか、パラシュートを一織が用意しておかないと自分の背中にないまま七瀬さんは飛び降りる、くらいは考えていると思います。

 一織が九条鷹匡にならない理由は、彼のスーパースターが七瀬陸だから。ゼロと九条も、陸と一織も、友人です。でも目線が違う、見ている景色が違う。出逢ったものなにもかもが違う。別の人間だから同じ運命は辿らなくて当然だけれど、ほんのわずかな違いが分岐を決める。一織は九条と同じ場所には辿り着かない。

 

 完璧だから助けは必要ないと思った。これはTRIGGERがあの時、周囲に思われていたことです。そのセンターである九条天は、ゼロを超える存在になるために育てられました。もし、九条天がソロアイドルだったら最悪の事態が起こっていたかもしれません。

 

和泉一織の話

 最近の一織の言動、ちょっと危うい気がして怖いんですよね。環くんの件でより強く感じたんですが、ダンスってアイドルにとっての商売道具のひとつなのに、それをより深く学びたいと言うメンバーの気持ちをそんなに突っぱねますかね。悠に対して口を出すなと言うのはまだ納得できるんですけど、TRIGGERの舞台に首を突っ込み出したあたりからは「う~~~~~ん????」となりました。七瀬さんのコンディションに関わるのは解るけど、公表前の情報とか音源に手を出しちゃ駄目でしょ……。九条家での一件はあまりにも強引で一織らしくない行動だなと思いながら読み進めました。七瀬陸を“ニュージェネレーションのスーパースター”に仕立て上げるつもりなんでしょうけど、そう簡単にはいかないだろうしなあ……。

 一織がIDOLiSH7のプロデュースをしていたことをメンバーに告白したとき、本人は断腸の思いだった筈です。でもみんなは、なんだそんなことかという反応で、それに対し一織はもっと早く言ってしまえばよかったと零していました。でも、もっと早い段階で言っていたらああはならなかったと思います。プロデュースに口を出し始めた段階だったら反感を買っていたかもしれません。それこそ彼の実兄・三月は、IDOLiSH7としての活動を通して、一織がどれだけ自分のことを考えて分析して、当時の自分に助言しようとしていたのかを理解していきました。それがない段階だったら「一織、またか。お前もメンバーなんだから、そんなことは辞めろ。」そう言われていてもおかしくありません。一織と過ごした時間が、みんなに“なんだそんなこと”と言わせたのだと思います。そのくらいのことだったら一織には安易に想像できそうなものなのに、そうでないことが彼の不安や恐怖を示唆しているようにも思えました。

 現状、一織が倒れたら陸もIDOLiSH7も共倒れです。彼が判断を誤ったらIDOLiSH7は終わります。そのくらい、一織自身が一織を信頼しきってしまっているんです。それこそ環くんの一件の時に悠に言ったように「私は間違えません」と、本気で彼は思っています。それはすごく大事なことなんですけど、すごく危ない。プロデュースをメンバーに隠れてやる必要がなくなった以上、彼は表立って意見を出してくるでしょう。そのときに、他者の言葉を聞き入れる姿勢すらなくなったら。アイドリッシュセブンという物語においてIDOLiSH7が破綻しない保証はありません。和泉一織はこの先、もっと大きく変わっていく人物だと思います。

 

 長くなりましたが、感想妄想文前編は一度締めとします。次回は九条天と七瀬陸の話を中心にしたいと思います。こんな文章でよろしければ、またお読みいただけると幸いです。では。