17日の木曜日

思ったことを思ったままに。

アイドリッシュセブン本編第五部を読了した話 ‐中編‐

 おはようございます、紘月です。

 感想妄想文中編です。

 重苦しい話の前に。九条天のモノマネする七瀬陸(CV.小野賢章)があまりにもそっくりすぎて吃驚したんですけど、アレ小野さんですよね……?まだアイドリッシュセブンを始めたばかりの頃、小野さんと斉藤さんも登壇されたリアルイベントで、お二人の顔が映っていない時に喋られたのがどちらだったのか分からなかった、ということがありましたが、本気でやるとあそこまで似るんですね……。声優すげーな……。

 では本編。

 

九条天と七瀬陸の話

 ふたりが双子でなければいけなかった理由は、七年前からこのためにあった。左右対称の髪型は、鏡の向こうの自分だから。ラストシーンの演出は、客席に背を向けて鏡を見詰めながら独り歌うゼロ。そのシーンで披露される「Incomlete Ruler」はデュエット曲である。それらが明かされ、ひとつの可能性に辿り着いたときには鳥肌が立ちました。さすがアイドリッシュセブンだ、と。IncomleteRulerの意味は、恐らく“不完全な支配者”。ゼロがゼロ自身を表現した言葉だと思います。

 「たかがIDOLiSH7のセンターくらい モブにしてみなよ」

 その前の天の言葉には兄としての私情が確実にありました。七瀬陸がいることで最高のものになると演出家・九条鷹匡が確信しているのに、演者がそれを受け入れない理由はありません。一方で、陸には一切迷いがなかった。陸はプロのアイドルIDOLiSH7の七瀬陸”として、九条鷹匡からのオファーで舞台に立つことを決めました。天と一緒に歌えるだとか同じ舞台に立てるだとか、そんなことは頭になかった。TRIGGER主演のミュージカル「ゼロ」を最高のものにするための駒になると。

 「子供の頃から守ってきたんだ 今更生き方を変えられないよ」

 この言葉は、今までやはり彼は陸に対して心からは仕事上のライバルとして接せていなかったと、告白したも同然だと思っています。天も陸が心配で大好きでしかたがないんです。でもそれを認めてしまうのは、天にとって弱さだから言えなかった。その弱さを出していいと言ったのは、他でもない楽さんと十さんでした。天が自分の弱さを押し隠している間に、陸は天から少しだけ離れることを覚えていました。その違いが出たのが、変更されたラストシーンの演出が完成したときでした。

 このミュージカル「ゼロ」はTRIGGERの再起のための最後のピースであり、九条鷹匡の鎮魂歌であり、九条天と七瀬陸という双子の本当の意味での決別であったのだと思います。そして、陸と天にとって、七瀬天というアイドルの供養にもなったのではないでしょうか。陸も天も、自分に吐いてきた嘘と枷を赦し、本当の意味でのライバルになってくと思います。

 ま、ブラコンは変わらないと思いますけどね~~~~。

 

伝説のアイドル・ゼロの話

 ゼロとは何者なのか。本名もビジュアルも人となりすらも、詳細は一切公表されていません。ゼロというアイドルの追憶となった第五部で明かされなかった以上、これから先、ゼロの正体を知ることはないと思っています。九条鷹匡の二重人格、実は既に登場している等の説を一旦否定して、ゼロの正体は今後一切明かされないという前提で話していきます。

 私の思うゼロの正体は、アイドリッシュセブンです。グループのことではなく、この作品そのものです。アイドリッシュセブンにはいつか終幕が訪れます。熱狂して、期待して、愛して愛されて、極上のエンタテインメントを魅せて、いつかは我々の記憶の中だけのものになります。少なくともアイドリッシュセブンのファンにとっては、ゼロの正体はアイドリッシュセブンです。もっと詳しく言うならば、アナタにとってのスーパースターが、ゼロの正体です。つまりゼロは人の数だけ存在し、想う人によって異なるということです。ゼロの人となりやビジュアルが語る人物によって異なり、情報もぼんやりしたものしかないのも、そういった狙いがあるのではないでしょうか。ゼロをアナタにとってのスーパースターに重ねて、別れや痛みや幸福を想像してほしいと。

 第五部で、ゼロの物語は終幕しました。ゼロの伝説は終わり、新たな伝説が生まれると。本当にそうでしょうか?ゼロに夢中になって、ゼロに囚われている人間は、まだいます。TRIGGERの「ゼロ」を決して認めなかったファンもいます。それどころか、「ゼロ」を演じたTRIGGERに恨みすら抱いているファンも、絶対にいます。伝説は、そう簡単に覆らないんです。世界がどう動いても、川の中腹にある大岩に引っかかったままでは動けないんです。あの世界には、そういう人がまだたくさんいるはずです。ですが、ミュージカルに関して反感を唱える人物を描かなかったことから、この問題は本編では語られることはないと思います。物語としては、ゼロ編終幕といったところでしょうか。

 

 アイドリッシュセブンを読んでいると、どうしてもとある実在のアイドルグループのことを思い出してしまいます。今回の第五部は、特に。私の中では明確なグループがあるのですが名前は伏せさせていただきます。

 グループがなくなってからも、彼らの記念日には話題が上がります。元メンバーをテレビで観ることはあっても、もう揃っているところは二度と観られない。横に並んで歌って踊って、笑っている姿は、自分たちが大好きだった彼らはもう二度と観られない。そう分かっていながら、過去に縋り続けている人たちは実際にいます。でも時代は動いている。新たなアイドルが生まれ、流れが変わっていく。自分のスーパースターが過去のものなっていく。そこにしか嵌らないパズルのピースを失くしたような感覚です。誰かにとってのそんな存在が、ゼロの正体なのだと思います。

 

 妄想感想文中編は以上です。私は現実のアイドルファンも長いことしているのもあってか、アイドリッシュセブンに出てくる世論だとか、アイドルファンじゃない人たちの言葉がより深く刺さります。ドルヲタでない人達からしたら、TRIGGERの再起も歓迎されたものではないのかもしれません。そういう描写は今後あると思っています。

 次回、後編で流石に最後にしたいです。第五部であまり語られなかったけどどう見ても六部で怪しい動きをしそうな四葉環と逢坂壮五の話を中心にしていきます。こんな文章でよろしければ、またお読みいただけると幸いです。では。